分娩に際する説明・承諾書

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分娩に際する説明・承諾書
分娩予約に関する書類一式は妊娠32週目までに揃えて1階総合受付に提出してください。
この度は、ご妊娠おめでとうございます。私たちスタッフ一同も健康な赤ちゃんを出産されるためのお手伝いができることを、大変うれしく思っています。私たちは皆さまに満足していただけるように、安全で快適な出産をしていただきたいと考えております。妊娠・出産は病気ではありませんが、時として起きる異常事態に対して、適切な処置をしなければ母児ともに危険が及ぶ場合があります。そのため、必要に応じて予防的な検査・処置も必要となります。また、緊急時には詳しく説明する余裕がなく、口頭のみの説明・承諾にならざるを得ない場合もあることをご了承ください。

私たちが、日常、分娩時に行っている以下の項目について、あらかじめ知っていただき、みなさまの理解のもとにご承諾いただいておりますので、ご協力ください。尚、不明な点につきましては、医師または助産師に遠慮なく質問していただければと思います。
Ⅰ. 必ず行う検査・処置  通常、承諾書は取っておりません。
  1. 分娩監視装置(胎児心拍数モニタリング): 陣痛と胎児心拍を持続的に確認し、母児の安全を確認します。
  2. 点滴注射: 脱水時や分娩前後の大量出血などの異常事態に速やかに対応するために血管確保が必要です。 また、抗菌薬投与なども必要時に行います。
  3. 産後検査(3日目の採血・尿検査): 産後の状態を見るために必要です。
Ⅱ. 必要時に説明して行う処置・手術  通常、承諾書は取っておりません。
  1. 導尿: 膀胱に尿が充満していると、分娩進行の妨げになることや子宮退縮不良の原因になることがありますので、適宜行います。
  2. 人工破膜: 陣痛が弱く分娩が進行しないときや分娩が遷延しているときに、人工的に赤ちゃんを包んでいる卵膜を破り、破水させることによって陣痛が強くなり、分娩が進行することを期待して行います。この処置によって一時的に赤ちゃんの心拍が変動したりすることがあります。
  3. 会陰切開・会陰切開縫合術: 会陰切開は赤ちゃんを早く娩出させる必要が生じた場合に肛門裂傷を予防するために行うものです。会陰が十分に伸びないために、母体の適応で行うことも稀にありますが、基本的には必要のない会陰切開は行わない方針です。基本的に、生じた傷は溶ける糸(吸収糸)で縫いますので、抜糸は必要はありませんが、創部の状態により抜糸を行うこともあります。
  4. 吸引分娩・鉗子分娩: 何らかの理由で、分娩中に母体・胎児に危険が及ぶ可能性がある場合、急速遂娩(急いでお産にする事)が必要になることがあります。子宮口が全開し、且つ経腟分娩が可能と判断した場合に吸引分娩や鉗子分娩を行います(どちらを選択するかは分娩状況や医師の判断などによって変わります)。吸引分娩は、赤ちゃんの頭に吸引カップをかけます。鉗子分娩は、赤ちゃんの頭を金属製の器具(鉗子)で挟みます。いずれも、陣痛に合わせて牽引し、分娩のお手伝いをします。これらの影響で、産道裂傷(腟壁や会陰が裂けて傷ができること)が生じることがあります。また、胎児には、頭皮と骨の間に血腫や産瘤(むくみ)ができること、鉗子痕(鉗子のかかった痕)ができることがありますが、いずれも多くの場合、自然に軽快します。
  5. 胎盤用手剥離: 胎盤が15~30分経っても娩出しないときに、子宮の中から手を用いて(胎盤鉗子を併用することもあります)、直接胎盤娩出を行うことがあります。大量出血や、子宮内感染(産褥子宮内膜炎)を起こしやすく、子宮収縮剤の点滴や抗生物質の投与を行います。
  6. 子宮底輪状マッサージ・ガーゼ充填による圧迫・分娩後の子宮収縮剤の利用: 分娩後の子宮収縮が悪く出血が多くなることがあり(弛緩出血といいます)、まれに輸血が必要になることがあります。出血が多くなりそうなときや弛緩出血のときに行うことがあります。
  7. 母体搬送・新生児搬送: 病状が当院での対応が困難と判断された場合には、高次医療施設へ紹介、あるいは搬送することもあります。
Ⅲ. 承諾書に署名をいただく処置・手術
通常、説明の上、承諾書を頂いておりますが、緊急性が高いと判断される場合には、事前に十分な説明ができない場合や承諾書を頂く前に処置を始める事がありますので、ご了承ください(緊急事態から離脱した後に、担当医より経過をご説明いたします)。
  1. 子宮収縮剤(陣痛促進剤)の使用: 子宮収縮が弱く(微弱陣痛)、分娩が進行しない場合や分娩が遷延して母体疲労による子宮退縮不全を起こし大量出血(弛緩出血)の原因になることもありますので、適切な陣痛が見られない場合に使用します。また、予定日を過ぎても分娩の兆候が見られない場合や、母体・胎児の状況により早期の分娩が望ましいと判断された場合にも使用することがあります。
  2. 輸血・血液分画製剤の使用: 大量出血で生命の危機が生じた場合や、血液製剤使用の有益性が上回る場合(血管内播種性凝固の治療、血液型不適合の予防、母児間の感染予防など)に使用する事があります。
  3. 緊急帝王切開: 母体・胎児に緊急事態が生じて、一刻も早く分娩にする必要がある場合(経腟分娩による急速遂娩が困難な場合)に行います。麻酔方法・手術(腹壁 切開)方法など、ご希望に添えない場合もありますのでご了承ください。
Ⅳ. 終わりに
分娩は、自然に母児ともに安全に終了することが理想的です。しかし、正常に経過をしていても、突発的に思いがけない変化が起こることがあります。その際、適切な処置をとることによって、母児の安全が確保されます。私たちは安全な分娩のために日々修練を積んで、最適な判断ができるように努力しておりますが、100%回避できる合併症ばかりではないこともご理解ください。また、医学の発展のため、当院で行われた検査や診療記録は、個人情報が明らかにならないようにした上で、医学研究(研究結果の学会報告も含む)に使用する事があります。併せてご協力をお願いいたします。当院で分娩をご希望される場合、このような私たちの分娩方針を理解していただき、納得された方は署名をお願い申し上げます。